てっきんの具。

「てっきん」と呼ばれて40年のおっさんが書くブログ

常用漢字表見直しによせて――「俺」よりももっと除外すべき漢字があるのではないか

ども。鉄王です。

一応もの書きの端くれにいるものとして、この報道は見過ごすことができません。

常用漢字に追加188候補=「俺」は結論先送り−文化審

常用漢字表の見直し作業を行っている文化審議会のワーキンググループ(WG)は16日午後、追加候補として188字を漢字小委員会に提示した。小委はこのうち、常用漢字にふさわしいか意見が分かれていた「俺(おれ)」の扱いを議論したが、結論は先送りされた。
「俺」については、委員から「使用頻度が高く、常用漢字にすべきだ」「子供に使わせたくない言葉。あえて加える必要があるのか」と賛否両論が出た。
(時事通信 2008年6月16日 18時30分配信)

誰だ、こんな頓珍漢なこと言ってるのは。

残念ながら、今日現在、議事録が公開されていないので(5月12日・26日の議事録すらまとまってない為体)委員の名前は特定できませんが、常用漢字表から排斥したところで俺という言葉が子どもの世界から殲滅するわけじゃなく、まったくもって根拠のない主張としかいえません。

「子供に使わせたくない言葉」という観点で見直すのであれば

常用漢字追加案、「串」「丼」「尻」「枕」など計188字

常用漢字の見直しを進めている文化審議会の漢字小委員会は16日、「串」「丼」「尻」「枕」など計188字を新たに常用漢字(1945字)に加える検討案をまとめた。
(中略)

【新しい常用漢字になる可能性が高い188字】

藤誰俺岡頃奈阪韓弥那鹿斬虎狙脇熊尻旦闇籠呂亀頬膝鶴匂沙須椅股眉挨拶鎌凄謎稽曾喉拭貌塞蹴鍵膳袖潰駒剥鍋湧葛梨貼拉枕顎苛蓋裾腫爪嵐鬱妖藍捉宛崖叱瓦拳乞汰勃昧唾艶痕諦餅瞳唄隙淫錦箸戚蒙妬嗅蜜戴痩醒詣窟巾蜂骸弄嫉罵璧阜埼伎曖餌爽詮芯綻肘麓憧頓牙咽臆挫溺侶丼瘍僅柵腎梗瑠羨酎畿畏瞭踪栃蔽茨慄傲虹捻臼喩萎腺桁玩冶羞惧舷貪采堆煎斑冥遜旺麺璃串填箋脊緻辣摯汎憚哨氾諧媛彙聘沃憬捗訃
(読売新聞 2008年6月16日 21時31分配信)

の太字の文字をよっぽど排斥するべきだと思うし、そもそも

漢字使用の「制限」(を旨としていた当用漢字表―以上引用注)から「使用の目安」を示す
(田部井文雄『「完璧」はなぜ「完ぺき」と書くのか』 p.14)

理念に転換した常用漢字表に見直しなんていう作業が必要なのか、という疑問がわいてきます。漢字運用のインフラの面から見れば1945字をはるかに凌駕する文字数を表現できる環境が整っているわけで、ハード的な成約に立脚して考えたとしても常用漢字表の存在意義は怪しい。アメリカによる陰謀史観という見方もあるけれど(漢字使用の制限→国語力の低下→言論能力の低下→国際競争力の低下→傀儡 ウマー(゚д゚))、物事を表現する手段が限られていた占領下の時代ならともかく時代背景だってまったく違う。

「当用漢字表」とは、その「まえがき」によれば、「法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で、使用する漢字の範囲を示したもの」である。そして「この表の漢字で書きあらわせないことばは、別のことばにかえるか、または、かな書きにする」ことになっていた。ところが、同時にその「まえがき」に、次のような一項があったのである。

一、固有名詞については、法規上その他に関係するところが大きいので、別に考えることとした。
(円満字二郎『人名用漢字の戦後史』 p.18)

と、当用漢字表の時点で矛盾をはらんだシステムだったのです。

「俺」がどうとか「串」があーとか枝葉末節をいじくるんじゃなくて、制定当初から崩壊してたシステムの存在そのものを見直した方がいいんじゃないでしょうか。これも「戦後レジームからの脱却」ということで。

と書いて気付いたが、チンパン首相になってから「戦後レジーム」って言葉、すっかり聞かなくなったね。

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